Q ストリートダンスにはどんなジャンルがあるの?
ストリートダンスは、1970年代に、アメリカの黒人が作ったダンスの総称です。
ヒップホップ、ロック、ブレイク、ポップ、ワック、ハウス、、、などたくさんのジャンルがあって最初は訳がわからないと思いますが、「地域where」と「時代when」の2つの軸で分類すると理解しやすいと思います。
まず、地域whereで2つに分類します。西海岸(ウェスト・コースト)と東海岸(イースト・コースト)に大別します。それぞれの特徴をまとめると表のようになります。
西海岸west coast | 東海岸east coast | |
本拠地 |
カリフォルニア州 ロサンゼルス |
ニューヨーク州 ニューヨーク |
主な地域 |
ロサンゼルス、ハリウッド フレズノ、サンフランシスコ |
サウスブロンクス、ハーレム ブルックリン、マンハッタン |
原点 | ソウル | ヒップホップ |
踊る層 | 老若男女 | 若い男性 |
踊る場所 | クラブやディスコ | スラム街の路上 |
経済状況 | 裕福〜貧しい | 貧困 |
スタイル | サークル | バトル |
曲の特徴 | ファンク | ラップ |
信条 | 黒人のソウルを表現 | ギャング同士の抗争 |
髪型 | アフロ | ドレッド |
服装 | ピチピチ | ダボダボ |
文化 | ミラーボール | 銃、グラフィティ、DJ/MC |
主なダンス | ロック、ポップ、ワック | ヒップホップ、ブレイク |
例えば、「ヒップホップ」は「東海岸」のダンスなので、スラム街の貧困層の若者たちが、毎晩DJがかけるブレイクビートとMCのラップに合わせてダンス・バトルを繰り広げている感じです。あたりの壁にはグラフィティ (画像左)がびっしり描かれ、銃声がなることもありますね。ダボダボな服を着るのはお金がなくて、成長期の子供に、親が頻繁に服を買い与えられなかったからだとか言われています。
そんなムーヴメントの裏、「西海岸」では、ハリウッドを夢見る若い男女がソウル・トレインのオーディションに挑戦します(画像右)。ミラーボールが回る華やかなディスコ・クラブでは、B.T. expressなどのファンクの生演奏にあわせて、アフロヘアーでピチピチの服をきた黒人が踊っています。
このように、東のダンスと西のダンスでは、全然スタイルが違っていますね!
次に、時代whenで3つに分類します。オールド・スクール(1970年代)、ミドル・スクール(1980年代)、ニュー・スクール(1990年代)に分けます。「1970年から10年ごと」と覚えれば良いので、簡単ですね。
ストリート・ダンスは1900-1930年くらいにはその卵のようなものはありましたが、それが完全に文化として孵化し、成長し、一人前に羽ばたけるようになったのは1970年と考えることが多いです。それは、1964年にキング牧師がノーベル平和賞を受賞し、1965年に投票権法が制定されたことで、黒人の地位が大きく上昇したからです。そして、1971年にドン・コーネリアスが司会を務めるテレビ番組「ソウル・トレイン」が全米に放映され始めます。これが西海岸のダンスの祖、いやはやストリート・ダンスの原点である◎ソウル・ダンスの誕生です。具体的に「こういうダンスをソウルダンスといいます」とは言い難く、曖昧な表現ですが、黒人の魂(ソウル)やストリート文化の原点などに差し迫っていく文化のあり方であり、その考え方や姿勢という風に捉えればよいと思います。
一方で、東海岸では1974年11月12日が、ダンスの誕生の日とされています。この日を「ヒップホップの日」といいます。これはヒップホップ3人組の1人アフリカ・バンバータ(画像右)が「ラップ」「DJ」「ダンス」「グラフィティ」の4つをヒップホップの4要素として宣言した日だからです。◎ヒップホップは具体的なダンスのジャンル名というより、このようにして誕生したダンスに加えて、音楽やファッション、アートなどを包括した1つの大きな黒人文化という風に捉えるべきでしょう。もちろん、ヒップホップといった場合に、シンプルにその踊りのみを意味することもあります。(ややこしいですw)
脱線しますが、ヒップホップ3人組の残り2人についても紹介します。1人はクール・ハーク(画像左)です。彼は曲と曲の間奏部分(ブレイク)をより長くかけるために、1枚のレコードを用いてブレイク・ビートを考案した功績をもちます。これに合わせてB-boyが踊っていたダンスこそ、◎ブレイク・ダンスです。クール・ハークはこの功績からゴッド・ファーザーという愛称をもちます。もう1人はグランドマスター・フラッシュ(画像中央)という、クール・ハークの弟子です。彼はスクラッチを広めた功績を持ちます。実際にスクラッチを開発したのは彼の親戚のグランド・ウィザード・セオドアだと言われています。このエピソードは映画「スクラッチ」で有名です。
オールド・スクールではこのように、東と西で全く別のムーヴメントとして、ほぼ同時期にダンスが誕生した時代ですね。まず大まかに、東はヒップホップ、西はソウル、と考えるとわかりやすいと思います。
ミドル・スクールからは、東と西の区別は曖昧になっていきます。ミドル・スクールは別名ヒップホップ黄金時代といわれます。これは東のブレイク・ビートをはじめとするヒップホップ文化が、西のソウルやファンクの影響を受けて、より洗練されたヒップホップとなった時代だからです。代表的なジャンルは◎ニュージャックスウィング(NJS)でしょう。テディー・ライリーが中心となり、キース・スウェットのI want herを皮切りに送り出した音楽が原点です。70年代に始まったファンク、ソウル、ディスコなどの文化は、リック・ジェイムスやキャメオなどの伝説的なアーティストこそいましたが、音楽的な大きな変革はありませんでした。そこにプログレッシブな波を引き起こしたのが、ジャネット・ジャクソンのアルバム「コントロール」です。
みなさんがよく知っている、マイケル・ジャクソン(画像左)や彼の妹のジャネット・ジャクソン、ブルーノ・マーズ(画像中央)、ブリトニー・スピアーズ(画像右)などの伝説的なアーティストはすべて、ヒップホップ黄金時代であるミドル・スクールに原点をもつアーティストなんですね!
その次の時代であるニュー・スクールといえば、なんといっても◎ハウスが有名ですね。ハウスは、ディスコ(西海岸)でかかっていた音楽に合わせて、ニューヨーク(東海岸)のダンサーたちがヒップホップ、ブレイク、カポエイラ、サルサなど様々なジャンルをフリースタイルで踊っていたのが起源だとされています。(ニュースクール以降は、ミドル・スクールですでに東と西の文化が融合・発展してしまっているので、わざわざ地域で分類する意義は薄れています。)
もともとは1970年代末に、クラブ「パラダイス・ガラージ」のDJラリー・レヴァンがハウス独特のリズムパターンの音楽をかけていたのが始まりです。ラリーの友人のフランキー・ナックルズと共に、シカゴのウェアハウス(「ハウス」の語源)に招かれDJをしますと、そこでゲイから高い人気を博しました。そうしてブードゥーレイ、カリーフ、イージョー、ピーターポール、ブライアングリーン、トニーセクー、ジャスティス、シャン、マイク、トニー・マクレガー、シャー、マージョリーなどのダンサーの功績により、ハウスは大成されます。Crystal WatersのGypsy Womanという曲のPVでは、カリーフとピーターポールが出演しています。ハウスで有名なピーター・ポールというムーヴはこれが由来にあるんですね!
その他、ダンスのジャンルを紹介していきます。
◎リンディー・ホップ:最も古いダンスの一種です。1927年に大西洋単独無着陸飛行を達成したチャールズ・リンドバーグの名前に由来をもちます。映画「タイタニック」で踊られていたことで、有名になりました。
◎ビバップ:1940年代のジャズ音楽(ビバップ;ジョン・コルトレーンなどが有名)に合わせて踊られていたダンスです。
◎ロボット:1960年代の未来映画に着想を得て考案された、ロボットやマネキンのように踊るダンスで、ポップダンスのもとになりました。
◎ロック:ドン・キャンベルが考案した、鍵をかけたように静止(Lock)、観衆を指差し(Point)、ピエロのような衣装で滑稽に踊る(Pierrot)ダンスで、正式名称はキャンベル・ロックダンスです。(くれぐれも"R"ockなどと言っちゃわないように!)
もともとはファンキー・チキンをうまく踊れなかったドン・キャンベルに由来をもちます。トニー・バジル(ミッキー)を筆頭に、フレッド・ベリー(レルン、ペンギン)、グレッグ・ポープ(キャンベルロックジュニア)、アドルフォ・クイノネス(シャバドゥー)、ビル・ウィリアムス(ロボット)、レオ・ウィリアウソン(フルーキー・ルーク)らからなるザ・ロッカーズというチームが大成しました。チェーン・リアクションというチームも有名ですが、オールド・スクール・ディクショナリーではスキーター・ラビットとフロー・マスターに「白い!」とけっこう叩かれていますw
◎ポップ:1978年に、カリフォルニア州フレズノ出身のブーガル・サムとポッピン・ピートによる兄弟が開発したダンスです。エレクトリック・ブーガルーズというチームが発展させました。映画「ブレイクダンス」「ブレイクダンス2」で有名になりました。ロボットダンスに、全身の筋肉を弾く(Pop)要素を加えたダンスです。エレクトリック・ブーガルーズのメンバーは、スキーターラビット、ミスター・ウィグルス(かのマイケル・ジャクソンにダンスを教えた人!)、シュガー・ポップ、ジャジー・ジェイ、ジョーン・ブーグ(ポッピン・ピートの息子)、ポッピン・タコらがいます。
◎ワッキン(パンキン):1970年代のロサンゼルスのゲイ文化から生まれたダンスです。ダイアナ・ロスがバックダンサーとして起用したことで有名になりました。タイロン・プロクターがソウル・トレインで広めたことでも知名度を得ます。ワッキンwaackとパンキンpankinの違いについてですが、ダンサー本人はワッキンと自称していましたが、それを差別的に第三者がパンキンと称していたという違いがあります。しかし、現在ではどちらも同じような意味で使っています。人によっては差別的なパンキンと呼ばれたほうが嬉しい人もいるみたいなので、どちらのほうが好ましいかは分かりません。(わかる人教えて〜w)
最後に、「地域where」と「時代when」で分類した作った表をあげておきます!
ダンスにはたくさんのムーヴがあります☺️
その一部を紹介します🙌
・Side Step
・Fresno
・Which a Way
・Silver Dollar
・Brooklyn
・IDJ-step
・The Lock
左右に足踏みするダンスの基本中の基本技です。派生するムーヴとして「ポップコーン」の他、オリジナル・ロッカーズの一人フルーキー・ルーク(本名はレオ)がアレンジした「レオ・ウォーク」や、アレサ・フランクリンのロック・ステディのPV内で踊られていたことから有名になった「ロックステディ・ウォーク」、リチャード・ニクソン大統領が起こしたウォーターゲート事件(1972)に着想を得て考えられた「ウォーターゲート・ウォーク」などがあります。
ポップダンス発祥の地カリフォルニア州フレズノ地区で考えられたムーヴです。ソウル・トレイン内で踊られていたロボット・ダンスにヒット(ポップ)の要素を加えてできたのがポップ・ダンスで、フレズノはその最も基本になるムーヴです。ポッピン・ピートとブーガル・サム兄弟によって大成されたポップダンスは、西海岸のオールドスクール・ダンスです。
“Which a Way?(道はどっち?)”から。フルーキー・ルークが、アニメ『トムとジェリー』に着想を得て考えたムーヴで、馬に乗っているように見えたことから、周囲の人から「アイロン・ホース」と呼ばれました。しかしフルーキーはその呼び名を嫌いウィッチアウェイと名付けました。現在では、ウィッチアウェイとアイロンホースは全く別のムーヴとして分化しています。日本でもゴー・ゴー・ブラザーズのウィッチアウェイは有名ですよね。ちなみにダンスではアニメに着想を得たムーヴが多く、「スクウビードゥ」という技もあります。
お金を探す動作からできたムーヴです。「コックローチ」というゴキブリcockroachを捕まえようとする動作からできたムーヴがありますが、それは一説によると転がるお金を探す動作からできたともされています。ポップダンスでは「ダイム・ストップ」という1ダイム硬貨(=10セント硬貨)を発見して静止する動きからできたムーヴもあります。ダンスにはちょっとした生活動作からできたムーヴが多く、ズボンを履く動作からできた「ホット・パンツ」、ポン引きpimpの歩き方からできた「ピンプ・ウォーク」、シャバドゥーが乗っていた車からできた「フォルクス・ワーゲン」、さらに「ヒッチハイク」「スニーク」「ギター」「ベビーシッター」「エアプレーン」「デッド」「フットボール」「ランニングマン」「ペーパーシート」「ヘリコプター」「バタフライ」「チキン」「クラブ」というムーヴもあります。
ヒップホップは東海岸のダンスです。1970年代、西海岸の華やかなディスコブームの裏で、NYのサウス・ブロンクス地区では貧困な黒人の若者たちによるブロックパーティが毎晩ありました。DJがレコードを回し、壁にグラフィティを描き、MCがラップを披露していました。ブレイク・ビートやスクラッチという概念が生まれ、クール・ハーク、グランドマスター・フラッシュ、アフリカ・バンバータのhiphop3人組によって1974年11月12日(ヒップホップ記念日)、「黒人の弾ける文化」としてのヒップホップ文化が誕生しました。ブルックリンはクイーンズを挟んでサウスブロンクス地区と対側に位置する地域です。ブルックリンはブルックリンで1980年代のミドル・スクールの時代に誕生したムーヴです。
黒人文化であるダンスが誕生したのは1971年だと言われています。1964年のキング牧師の演説や、1965年の投票権法により、徐々に黒人文化の地位は向上しました。そして1971年、ドン・コーネリアスによる黒人の黒人による黒人のためのテレビ番組「ソウル・トレイン」は瞬く間に全米人気のテレビ番組となり、その拠点をハリウッドに構えました。そこで誕生したダンスがソウル・ダンスで、これがダンスの祖だといわれています。 ジェームス・ブラウンのソウル・パワーという曲からも当時を伺えます。
ところが、この”1971”といいう数字はダンスが文化として認められた年代にすぎず、実際にはもっと昔からダンスはありました。1930年代にニューオリンズ地区で流行った、現在は絶滅してしまったbebopダンスはその一つです。ジョン・コルトレーンなどのジャズ音楽に合わせてコットン・クラブで踊られていたbebopダンスは絶滅しましたが、1980年代に”IDJ”(I Dance Jazzという意)というチームがイギリスで誕生し、bebopダンスを復活させました。IDJがよく踊っていたステップがIDJステップです。1971年以前には存在していたが現在は絶滅してしまったダンスとして、他にリンディー・ホップ・ダンスという1927年に太平洋単独無着立飛行を成し遂げたチャールズ・リンドバーグの名前に由来をもつダンスもあります。これは映画『タイタニック』で有名になりました。
ロックダンスは実は略称。正式名称はキャンベル・ロックダンスです。これはファンキー・チキンをうまく踊れなかったドン・キャンベルというダンサーの名前に由来します。曲に合わせて連続的に踊るソウル・ダンスが流行る中、断続的・静止(lock)して踊ったドン・キャンベルのスタイルは面白がられました。メディアとの繋がりを持っていたトニーバジルを筆頭に、スキーター・ラビットやシャバドゥー、トニーゴーゴー(ゴーゴーブラザーズの父)などの面々が集まってThe Lockersというチームができました。彼らが踊っていたダンスこそ、いま知られているロックダンスの祖です。
ここまで読んでくれてありがとうございます!
ストリートダンスには、はっきりとした名前がついているムーヴだけでも1000を超える種類があります!
そんなたくさんのムーヴには、1つ1つに深い歴史とストーリーがあるのです。
ここで紹介したものは、そのごくほんの一部です。
ダンス部に入ったら、もっともっとたくさんのムーヴを知ることができます😆
続きは、ダンス部室で・・・✋ by Y